「ああ...... そうか............」<br><br>思わず呟いた俺に、少女が怪訝そうな視線を向けてよこす。<br>何でもないよ...... と微笑んで、額に束を当てた。<br><br>綺麗な蝶へと姿を変え、尸魂界へと飛び立つ魂を見送る。<br>夜空には、檸檬の月。<br>そして、冴え冴えと輝く冬の星座達。<br><br>......... ねぇねぇ黒崎君。 冬の大三角って、どの星を繋ぐのか覚えてる?<br><br>「大犬座のシリウス... 小犬座のプロキオン... オリオン座のベテルギウス...... だろ?<br>お前が教えてくれたんだ、忘れるわけがねぇよ」<br><br>俺の頬を、涙が伝う。<br>ゆっくりと目を閉じれば、頬を冷たい風が撫でていく。<br><br>......... うー、寒いねっ! でも私、冬の空気って嫌いじゃないよ? なんだか身も心も、凛と引き締まるような気がしない?<br><br>「 ああ 、 井上...... 俺も、そう思うよ」<br><br>呟きながら。<br>口の端に、笑みが浮かぶのを自覚する。<br><br>井上...... なぁ 、 井上?<br>俺、わかったよ。<br>やっと... やっと、わかったんだ。<br><br>お前は、死んだんじゃない。<br>消えてなんか、いない。<br><br>お前は... お前は.........。<br><br>この世界、そのものになったんだ.........。<br><br>そして、十数年が経ち。<br>俺は今日も、医者と死神代行、二つの仕事に精を出す。<br><br>かつてのように、それが井上の願いだからではなく。<br>それが、俺自身の望みであるからだ。<br>この世界を護る事は、すなわち、彼女を護る事。<br>それは「たった一つを護る」と言う名を背負った俺に、なんて相応しい任務だろう。<br><br>風の中に、彼女の声を聴く。<br>陽射しの中に、彼女の暖かさを思い出す。<br>街の中 、 すれ違う人 々 の笑顔に 、 彼女の面影を見つける 。<br>蝉や蜻蛉を追う、子どもたちの輝く瞳の中にも。<br><br>いつだって、何処に居たって。<br>ほら...... 気づけば其処に、此処に。<br>俺は、彼女を見つけることができる。<br>その存在を、感じることが出来るんだ。<br><br>あの... 彼女を腕に抱いた夜よりも。<br>もっともっと、近くて深いところで.........。 ...
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