『グガァァアアアア――ッ!』 微動だにしなかったアインが振り返ったのは、魔物と距離が一メートルほど近くになってから。 いつの間にか抜いていた剣を鞘に納め、「町に戻ろう」とだけ口にする。 魔物は動きを止め、瞳を震わせ、そして額の石がガラスの割れるような音を出して砕け散る。「アイン、様?」 ディルが静かに言う。「もう怒ってるんだ。 加減をする気はないよ」「...... ま、魔物はどうなさったのですか?」 この間にも硬直して身体全身を震わせる魔物は、アインが何かをしたのが一目瞭然。 が、ディルが尋ねて間もなく、海が真っ二つに割れた、、、、、、、。 しかしそれだけではない。 割れたのは海だけでなく、魔物そのものも身体を真っ二つに切り裂かれた。「そんな、馬鹿な......!?」「ッ――!?」 ウォーレンにつづき、ディルがあまりの出来事に絶句する。 二人の近くではエルフのサイラスも同じく言葉を失っていた。 割れた海は徐々に近づいていき、巨大な波となって町に襲い掛かろうとする。 しかし町を守るように現れる巨大な木の根と青々としたツタ。 人知を超えた質量を誇る多くの海水を、なんの影響もなさそうに受け止めて波を消し去って見せた。「...... 友達に手を出されて静かにできるほど、俺は出来た、、、人間じゃないよ――カミラ」 そうだ。 これこそが自分の仕えている主なのだ。 アインの背中を眺めつつ、ディルは英雄王に至るであろう主君を追った。
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